『気になる嫁さん』、気になるもの(1)

ユニオン映画・石立ドラマ・第2弾『気になる嫁さん』が現在CSで放映されています。今週で第11話まで来ました。アメリカ留学中の純が(何故だか突然)心筋梗塞で死んでしまい、めぐみは清水家を去ることになるのか!という展開のあたりです。

この『気になる嫁さん』、今までも、幾度となく再放映されてきたのですが、今回放映されているコンテンツは、ネガフィルムから直接デジタル化したものとのこと。本当にキレイな映像です。当時、日活からユニオンに移籍してきたベテラン映画人達が、テレビでも映画並の撮影にこだわったと云われる訳が、今になってようやくわかった気がします。同時に、それまで放映されてきた本来の価値を伝えない低画質の映像はいったい何だったの、と言いたくなるぐらい腹立たしさも感じます。

一方、鮮明になったせいか、どうも映像の細部についつい目が行ってしまいます。例えば、「大判社」のデスクの上に置かれたパイロットの赤と黒のインク瓶。こんな所にインク瓶なんてありましたっけ?今までは全く気にも留めませんでした。そう云えば、同じパイロットの赤と黒のインク瓶が純と力丸の部屋のデスクにもありました。でも、当時すでにボールペンが一般的だったし、文彦も万年筆なんか使っている様子もないし、何でインクが置いてあるのだろう、ちょっと奇妙だな...てな感じで、ついつい、深ヨミをしてしまうんですね。

今まで何気なく見過ごしてきたモノがよく見えるようになる。今回の放映では、当時の風景やら小物に、ことさら注目して観ています。そこで、『雑居時代』のロケ地の話は小休止し、『気になる嫁さん』から懐かしさを感じたり、「気になる」ものをピックアップしてみました。一部、ツイッターで紹介したものもありますが、ご容赦のほどを。
大判社、第1話より

第1話

1.1 京王線・新宿駅地下ホーム
最終電車に乗り損ねた純とめぐみ。40年以上経った今でもホームの雰囲気が同じことに、ちょっとした驚きを感じます。建て替えなどしない限り、駅って案外変わらないものなんですね。時計が指している時刻は午前0時30分ぐらいでしょうか?電車の行き先は「桜上水」となっています。今でも、京王線の(新線)新宿発終電は「桜上水」車庫止まりです。どうやら、本当の最終電車を使用してのロケだったようですね。皆さん、お疲れ様でした。

でも、何故「小田急線」でなくて、「京王線」なんでしょうね。そうか、めぐみのおばさんの家は「神代団地」横の歯医者さん。最寄り駅は京王線・つつじヶ丘ですね。

1.2 湖池屋・ポテトチップス
丸ノ内線・赤坂見附駅で、文彦がめぐみに渡したポテトチップスは、よく見たら湖池屋のものでした。後に、石立さんは湖池屋ポテトチップスのCMに出演することになるのですが、ひょっとしたら、これが縁だったっということはありませんか。石立ファンの方、何かご存知ですか?

1.3 大型電気炊飯器
清水家の食卓シーンにいつも登場するこの大型電気炊飯器、初回放映された43年前は、気にも留めませんでしたが、今見るとデカく感じます。当時は、清水家みたいな大人数の家族もさして珍しくなかった時代でした。毎日、大人数のお米を研いで炊くのもひと仕事。でも、清水家のお勝手を預かることがバーヤさんの生きがいなんですね。この炊飯器はその象徴なのかも。

ところで、何故、清水家に「バーヤさん」というキャラクターを入れたのでしょうか?文彦や純たちの母親がまだ生きていれば、バーヤさんは居なくてもよかったわけだし、どちらかと云えば、その方がよくあるホームドラマの設定でしょう。でも、そうすると今度は、めぐみと姑の話がクローズアップされ、それこそ「橋田壽賀子」ドラマと変わらなくなってしまう、松木ひろし氏たちが狙ったかわいた笑いのシチュエーションコメディーから外れてしまう、と云ったところでしょうか。

第2話

2.1.世田谷の田舎
今でこそ、高級住宅街の代名詞になった成城ですが、70年代初頭は、一歩、街から外れると、まだ田舎の風景があちこちに残っていました。じゃり道や雑木林、何故かこういう風景がたまらなく懐かしくなります。


この道の現在の風景はGoogleストリート・ビューでご覧になれます。世田谷区成城2丁目36番地あたりから東向きに仙川に架かる橋へ向か道です。今では、全く平凡な住宅街になってしまいました。

2.2 街の電器屋さん
文彦がタクシーから降りたのは、成城学園前駅北口の商店街。背後にナショナルショップの当時の看板が見えますね。この看板「ナショナル電子レンジ」なんて書いてあります。当時はちょうど、家電メーカーが、クーラー、カラーテレビに続いて電子レンジを家庭に売り込もうとしていた頃でした。電気器具は街の電器屋さんで買うのが当たり前だった時代。今じゃ、めっきり減ってしまいましたね。そう云えば、「ナショナル」ブランドもいつの間にか無くなってしまいました。

2.3 栗の皮剥き
今晩、清水家では栗ご飯にでもするのでしょうか?美味しそうですね。バーヤさん、皮剥き、ご苦労様です。

2.4 ルノワールの銀行カレンダー
上の写真、背後の壁に貼ってあるカレンダーの絵はルノワール「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢の肖像」。当時、銀行からもらうカレンダーはルノワールのものが多かった気がします。

2.5 お月見
十五夜の月見とは風情ある演出です。それにしても、このススキの飾りと月見団子を用意したのはバーヤさんでしょうか?バーヤさん栗を剥いたり大忙しですね。当時、都内でもススキはあちこちに茂っていましたが、今では、滅多に見なくなりました。十五夜は9月15日前後ですが、43年前、9月半ばと云えば、都内でもヒンヤリと秋の風情が感じられました。今では、まだ暑さが厳しく月見をするなんていう気持ちの余裕も無くなってきました。温暖化は確実に進んでいます。

2.6 パンアメリカン航空
当時、超一流キャリアだった「パンナム」。1991年に倒産し、その後、一部残っていた「パンナム」名の路線も今は完全に消滅したそうです。CAさんのブルーの制服がカッコ良かったですね。「兼高かおる世界の旅」はパンナムの協賛でした。


(続く)

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