『気になる嫁さん』、気になるもの(2)

先日、ツイッターでフォローしていただいている、ある方が「70年代独特の空気感は、華やかで、刺激的、全てが新鮮!」とコメントされていました。HDリマスター版の『雑居時代』や『気になる嫁さん』の映像から伝わってくる当時の空気感は、まさしく、この方のコメントの通りなんだと思います。

これらのドラマをリアルで観ていた世代にとっては、懐かしさ半分というところもありますが、初めてこれらのドラマをHDリマスター版で観たら、きっとそんな感動を覚えるのだろうなー、と、ちょっと嬉しくなりました。間違いなく、70年代の空気には、今の世相からは感じられない、華やかなエネルギーが満ち溢れていました。

『気になる嫁さん』、第3話。小夜子は、偶然、新宿の小田急百貨店で、めぐみのおばさん、宏子と出会います。めぐみの嫁入り道具を見に来ていた宏子は、「小夜子さんだったら、どのドレッサーがお好き?」と言って、二人で家具売り場を見て回るのでした。

第3話、新宿小田急百貨店の家具売り場 (3.1)

今は、「百貨店、冬の時代」とか云われ、増してや、消費が落ち込んでいる家具の売り場など廃止しているところもあるぐらいです。上の写真のように鏡台をずらーと並べている百貨店など、今ではまずあり得ません。「こんなに鏡台ばっかり並べて、いったい、誰が買うの?」と、思われる方もいるかもしれませんね。

実は、『気になる嫁さん』が初回放映された1971年は、戦後のベビーブーマー「団塊の世代」が結婚適齢期に差し掛かった頃だったんですね。ドラマの中の純やめぐみの年齢は、おそらく、22か23歳。彼らもいわゆる「団塊の世代」です。

下の写真は、第5話、渋谷のカフェで輝正が読んでいた週刊誌の記事。毎年、相当数の男女が結婚する世相が記事になっています。なるほど、嫁入り道具の鏡台が、これだけ百貨店に並べられるのも納得できますね。

ところで、この記事の写真、大勢の新婚カップルから、何だか、すごいパワーが感じられませんか。70年代の華やかさは、当時若かった団塊の世代が一端を担って、醸し出していたのだと、今更ながら、気付かされる次第です。

そう云えば、『気になる嫁さん』という、結婚に関連する題名にしたのも、当時の結婚ブームに少なからず影響を受けていたのかもしれませんね。

第5話、団塊の世代、結婚ブーム (5.1)

さて、前回に引き続き、時代を感じさせる「気になる」ものをピックアップしてみました。

第4話

4.1 ローラー絞り機付き洗濯機
ローラー絞り機とは、2本のゴムローラーの間に洗濯物をはさんでハンドルを回して洗濯物を絞るというもの。ドラマの中で、めぐみも「ずいぶん古い洗濯機ね」と言っていましたが、当時、1971年には、洗濯槽と脱水槽がある「二槽式洗濯機」が、すでに一般的であったと思います。どうも、経済的には余裕がない清水家は、昭和30年代に買ったこの洗濯機をずっと使い続けているようですね。

4.2 御用聞き
「ちわー、魚辰でござい」と勝手口に現れた魚屋のお兄さん。当時は、清水家のような中流の家庭にも、酒屋や魚屋などの御用聞きが出入りすることも珍しくなかったと思います。勝手口には毛筆で「御通帳」と書かれた帳面が掛けられていました。この「御用聞き」、今では、ほとんど無くなってしまったかと思ったら、そうでもないんです。最近、買い物に行けない高齢者宅にコンビニが配達をするようになりました。現代版「御用聞き」です。

4.3 草ぼうき
1971年、当時はどの家庭でもすでに電気掃除機がほうきに取って代わっていたと思います。でも、このバーヤさんは昔ながらの草ぼうきも愛用しているようです。その辺りの演出はリアリティがあって、ベテラン映画人達のこだわりを感じます。

4.4 木製救急箱
一つ買ったら、いつまでもその家で使い続けられることになるのが、この救急箱。古くなったって、わざわざ買い換える人もいませんからね。フタを開けると、木製の箱の内側は赤チンやヨードチンキのシミが付いていたり、20年前に買った「正露丸」の瓶があったりと、「年代モノ」の救急箱も珍しくありません。先日、どこかのテレビ番組で知ったトリビア。「静岡は木製救急箱製造、国内シェアの95%以上を誇る日本一の生産地」なのだそうです。

4.5 女性誌『an・an』
「ELLE」の日本語版として創刊された、女性誌『an・an ELLE JAPON』。当時、この雑誌は小夜子のような大人の女性をターゲットにしていたようです。

4.6 トランジスタ・ラジオ
戦後日本の輸出ビジネスの稼ぎ頭の1つとなった「トランジスタ・ラジオ」。池田勇人総理がフランスのシャルル・ド・ゴール大統領から「トランジスタ・ラジオのセールスマン」と云われた話は有名。

4.7 ソニーのカセットレコーダー
ソニーという会社を知ったのもこの頃だった思います。ちょうど、その頃頻繁に流されていた「ワンガンスリービーム」と連呼する「トリニトロンカラーテレビ」のCMは今でも、記憶に刻み込まれています。最近のソニーがテレビ事業を売却するというニュースには、隔世の感を覚えます。

第5話
5.2 小田急ロマンスカー「あさぎり」
小田急ロマンスカー3100形SE車、『あさぎり』。清水家のロケ地となった世田谷・砧も、今はつまらない住宅街になってしまいましたね。当時のこういう風景に、何故か、とても惹きつけられます。

5.3 飯倉片町、ベニービル
小夜子が勤める「協和商事」のロケ地となったのは、飯倉片町の交差点にあった「ベニービル」。当時、ユニオン映画の本社はこのビルにあったそうですね。輝正の「太陽ガラス」、『パパと呼ばないで』、安武右京の「八方石油」、『雑居時代』、栗山信の「東和毛織」、など、オフィスシーンはほとんどこのユニオン映画の本社オフィスが使われたようです。最近、このビルは建て替えられ、今は「フェラーリ」のショールームビルになっています。窓から見える東京タワーだけは、変わりませんね。


(続く)

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