若い川の流れ(4) 赤松公園

曽根健助(浜田光夫さん)が姉(池田昌子さん)と住むアパート「若葉荘」は、東急世田谷線松原駅近く、赤松公園の隣です。この赤松公園、住宅街によく在りそうな普通の公園ですが、昔から多くのドラマや映画の撮影に使われています。記憶が新しいところでは、今年の夏の連ドラ『営業部長 吉良奈津子』(フジ、松嶋菜々子主演)や、ひと昔前では、『長男の嫁』(TBS、浅野ゆう子主演、1994)などのロケ地として使われました。

さらに遡ると、あの成瀬巳喜男監督の映画にも登場します。1963年の『女の歴史』。私の好きな映画のひとつです。戦前から戦後の激動の時代を生き抜いた女性の話で、泥々したストーリーですが、成瀬監督が描くと、やるせなさと軽妙さが混ざったタッチで、透明感があるドラマに仕上がるから不思議です。

下の写真はそのラストシーン。高峰秀子さん演じる主人公、信子が昼食どきに、姑(賀原夏子さん)と、死んだ息子が残していった孫を、公園に呼びに来るといったシーンです。これからも気丈に人生を歩み続ける信子達の後ろ姿を、ロングショットで追ってエンディングとなります。

実はこの赤松公園は、私自身、個人的によく知っている場所なんです。この映画のラストを迎え、いい映画だったなー、などと思っていたら、どこかで見覚えある公園が突如として登場。映像に「赤松公園」の表示板(写真左下)を見つけたときは驚きました。昔の名作映画のロケ地が実は極めて身近な場所だったことに、何とも言えぬ奇妙な感覚と嬉しさを感じました。

同ポジションで撮影した写真もUPします。今ではごく普通のつまらない住宅街の路地になってしまいましたね。

成瀬巳喜男監督、『女の歴史』(1963)より

2016年1月14日、撮影。

この写真を撮影した位置で、そのまま右を向くと、『ある日わたしは』第10話で、ゆり子(松原智恵子さん)と次郎(和田浩治さん)が、次郎が借りようとしているアパートへと向かうシーンのロケ地となります。 → 詳細はこちら

この公園は同じく成瀬映画、1960年の『娘・妻・母』でも使われています。下の写真はその一場面から。 この頃は、半ズボンの男の子やおかっぱ頭の女の子が公園で元気よく遊ぶ光景が見られましたね。写真、右手奥に写っているアパートが後に『若い川の流れ』(1968)の若葉荘となるわけです。

成瀬巳喜男監督、『娘・妻・母』(1960)より

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ネットで検索すると成瀬映画ファンのサイトにこの公園が掲載されていました。この公園が成瀬映画に使われたことはすでに知られているようです。では、ほとんど知られていないネタを少々。下の写真は『泣いてたまるか』第28話、「ある結婚」(TBS,1967)から。

渥美清さんと久我美子さんが、公園の箱ブランコで会話する場面です。またしても、どこかで見覚えある公園だと思っていたら、何と、「世田谷区赤堤四丁目10」という住居表示が電柱に見えました(住居表示が見えると録画を静止して、確認するのが癖になっています)。これも、間違いなく「赤松公園」ですね。



2016年1月23日、撮影。

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さて、ドラマ『若い川の流れ』の話ですが、下の写真は第11話から。田舎から上京した健助の両親がタクシーを降り、北岡みさ子(松原智恵子さん)と偶然出会うという場面です。左手に「赤松公園」が見えます。半世紀も前の東京の風景、いいですね。この道もよく知っている場所だけに、とても興味をそそられます。同ポジションで撮影した写真もUPします。
つづく




2016年11月6日、撮影

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