2017年6月29日木曜日

あいつと私 ロケ地の楽しみ(4)

引き続き『雑居時代』のルーツ、ドラマ『あいつと私』(1967)のロケ地を紹介します。

下の写真は第2話、西田圭子(松原智恵子さん)が黒田三郎(川口恒さん)と初めて黒田家を訪れるシーンから。三郎の車で黒田邸の石垣の前に乗り付けると、圭子の目に入ってきたのは、豪邸の塀に飾られた「美容・服飾研究家、モトコ・桜井」の看板。モトコ・桜井は三郎の母親で、今で言う「セレブ」という設定です。

ドラマでは、看板に書かれたヒゲの話が続きますが、それはさておき、この丘の上に建てられた豪邸、ロケ地はいったい何処でしょうか?

ドラマ版の『あいつと私』に先立ち、日活は1961年に同名の映画を製作しています(中平康監督、石原裕次郎、芦川いづみ)。 この映画版でも黒川邸(映画版は原作通り、「黒川」)に同じ邸宅を使用していました。また、日活ドラマ『ある日わたしは』(1967)にもこの邸宅が登場します(第26話、金子家)。こういうロケ地にはとても興味をそそられます。

おそらく、雰囲気からして、このロケ地となったお宅も西田家と同じ田園調布近辺であることが考えられますが、この第2話からは手掛かりが無く、ロケ地を特定することができません。


そうこうするうちに、第12話で、西田圭子(松原智恵子さん)が、タクシーで黒田家にやって来るシーンがあり(下・写真)、ここで重要な手掛かりを見つけました。

注意深く観ると、西田圭子の背後に電車が見えます。たぶん東急線でしょう。田園調布駅付近で、電車をこの方向に見下ろすことができる場所。そして、この坂道の曲がり具合。これらを手掛かりに、現地を散策してみることに。

ありました、ありました! 田園調布3丁目39番地辺りの坂道です。同ポジションの写真を掲載します。ドラマに写っていた豪邸はすでに、建て替えられていました。土地も分割されているようです。


2017年6月25日、撮影。

下の写真は映画版の黒川邸シーンです。



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さて、下の写真はこの映画版のラスト、三郎の父、甲吉(宮口精二さん)が、すねて家を出るシーンから。

あっ、この坂道、どこかで見たような。

映画『陽のあたる坂道』のオープニング、タイトルバックに登場する坂道ではないですか!(1958、田坂具隆監督、石原裕次郎、北原三枝)。

ネットで検索すると、この坂道は田園調布ではなく、緑が丘だとか、はたまた横浜市鶴見区などという情報が見つかりましたが、『あいつと私』の黒田(黒川)邸の近く、すなわち、田園調布だと考えるのが自然です。なぜなら、映画『あいつと私』の撮影で、この坂道シーンのためにわざわざロケを別の場所へ移動しませんからね。

このV字型の地形が特徴的なので、黒田(黒川)邸近くに、きっと見つかるはずだと思い、しばらく散策してみることに。ありました! 田園調布3丁目18番地辺りから、多摩川台派出所方向に向かう道です。60年近く経っても、地形は変わらないものですね。



2017年6月25日、撮影。

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ちなみに、この坂を登りきった先には交番(田園調布警察署多摩川台駐在所)があります。『おひかえあそばせ』、第2話(下・写真)に登場していました。



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キネマ旬報社・宮崎祐治著『東京映画地図』P139、「北原三枝が下りていく坂道は残念ながら田園調布ではなく横浜市鶴見区でロケされたと美術の木村威夫が証言している」と記載がありますが、間違いだと思われます。木村氏が語っていたのは「坂道は田園調布だが、田代邸のシーンは鶴見区の邸宅でロケした」というのではなかったでしょうか?

ところで、この『東京映画地図』、他にも間違いがあります。P163、「代々木大山公園、『娘・妻・母』(成瀬巳喜男)のラストに三益愛子と笠智衆が孫を連れて散歩する」、との記載がありますが、この公園は世田谷区赤堤の「赤松公園」です。

赤松公園の話はこちら